伊豆ハイキング特集 第1弾~踊子歩道~
豊かな自然と雄大な地形を誇る伊豆半島はハイキングコースの宝庫!
今回は歴史と文学の道、踊子歩道をご紹介します。
踊子歩道は中伊豆地域の浄蓮の滝を起点として、東伊豆地域の河津町湯ヶ野地区を終点とする、全長およそ19㎞、所要時間7時間弱のコースです。川端康成の名作「伊豆の踊子」の舞台となったことからこの名がつけられました。
コースの一部は伊豆半島の南北を結び、旧東海道へ接続する重要ルートであった旧下田街道と重複しており、幕末にはアメリカの初代駐日領事であり日米修好通商条約を締結したことで知られるタウンゼント・ハリスや吉田松陰が通った歴史の道でもあります。
コース上には、浄蓮の滝や旧天城トンネル、河津七滝などの見どころが多数存在し、季節を問わず訪れる人々を楽しませてくれます。伊豆半島ジオパーク公式HPでは各スポットの見どころを紹介していますので、併せてご覧ください。
※今回ご紹介するのは浄蓮の滝から河津七滝までのルートです。
【浄蓮の滝】
踊子歩道は、日本の名瀑百選に選ばれた浄蓮の滝からはじまります。天城山を水源とする本谷川にかかるこの滝は落差約25m、幅約7mの直瀑で、その雄大な姿から伊豆半島を代表する景勝地となっています。また石川さゆりのヒット曲“天城越え”に登場することでも有名で、滝つぼ付近には歌碑が建っています。
なお浄蓮の滝観光センターの駐車場から歌碑がある滝つぼ周辺まで行くには、およそ200段の階段を昇り降りする必要がありますが、この後のハイキングに向けて体力を温存したい場合は、伊豆の踊子像の裏手に展望台があるので、そちらからご覧いただくのをおすすめします。
https://b-izu.com/spot/post-6243/ (美伊豆HP)
ジオサイト情報
https://izugeopark.org/geosites/joren/?cid=05 (伊豆半島ジオパーク公式HP)
【道の駅 天城越え(昭和の森会館)】
浄蓮の滝を出発し、1時間弱歩くと道の駅「天城越え」に到着します。
同一敷地内にある昭和の森会館の中には、天城山周辺の動植物に関する展示をしている“森の情報館”や伊豆の大地の成り立ちを紹介する“伊豆半島ジオパーク天城ビジターセンター”、川端康成や井上靖といった伊豆ゆかりの文豪にまつわる品々を展示する“伊豆近代文学博物館”があります。
いずれの施設も踊子歩道と密接に関係しており、ハイキングをより楽しくしてくれる展示が充実していますので、是非お立ち寄りください。
なお、ここ道の駅「天城越え」から河津七滝(初景滝付近)までの区間には自動販売機など飲物を販売している場所がないため、お手持ちの飲料に不安がある場合はこちらでの購入をお勧めします。
https://b-izu.com/spot/post-6579/(美伊豆HP)
伊豆半島ジオパーク天城ビジターセンターに関する情報はこちらをご覧ください。
https://izugeopark.org/vc/vc_amagi/ (伊豆半島ジオパーク公式HP)
道の駅「天城越え」から道標に従って歩みを進めると、ルートは豊かな緑に囲まれた森の中に入ります。脇には本谷川が流れているため、夏季であっても清涼な空気を感じながら快適なハイキングを楽しめます。
ルートの途中には山々をつかさどる神(大山祇命)をまつる山神社が鎮座しており、かつてこの道が地域住民の重要な交通経路であったことを物語っています。
道の駅「天城越え」を出発してから約30分で“太郎杉”との分岐に行き当たるので、階段を直進します。
なお“太郎杉”はこの分岐点から南西約1.3㎞の距離にある、高さ53m、根回り13.6m、幹回り9.73mの天城山中第1位の巨木で、その樹齢は推定450年以上。時間と体力に余裕があれば是非ご覧いただきたい名勝です。
https://b-izu.com/spot/post-6249/ (美伊豆HP)
踊子歩道のルート脇には人工的な石積みがたびたび現れますが、これは天城の山林において行われていた御用製炭(幕府直轄の製炭事業)の名残です。
炭窯の遺構。ここで作られた炭は海運の他、旧下田街道を北上し、旧東海道を通って江戸へ運ばれました。
かつて天城の山林は江戸幕府が管理する御用林で、江戸時代後半に紀州尾鷲から伊豆へ製炭方法が伝播したことを契機に大規模な御用製炭が行われるようになりました。このため、当時の炭焼窯の痕跡を随所に見ることができます。
“天城遊々の森(キャンプ場跡)”にはその炭作りの方法を伝えたとされる“炭焼き市兵衛”の墓が残されています。
道の駅「天城越え」からおよそ2時間。水生下駐車場に到達するとルートは国道414号線(下田から沼津にかけて伊豆半島内陸部を南北に貫く道路)と交わるので、道路を横断して旧天城トンネル(天城山隧道)方面へ進みます。交通量が多いため、横断には十分な注意が必要です。
国道を横断してから旧天城トンネルまではおよそ1.8㎞、30分程度の行程です。整備された砂利道は非常に歩きやすいですが、この道は現在でも自動車の往来がありますので歩行にはご注意ください。
旧天城トンネルへと続くこの道は、まさに伊豆の踊子で主人公たちが歩いた道であり、道路脇には「伊豆の踊子」の書き出しの文章と、作者の川端康成のレリーフが刻まれた文学碑が立っています。
文学碑を横目につづら折りの道を歩き続けると、旧天城トンネル(北側口)にたどり着きます。
【天城山隧道(旧天城トンネル)】
多くの文学作品にも登場する天城山隧道(旧天城トンネル)
伊豆の踊子をはじめ、多くの文学作品に印象的なかたちで登場するこのトンネルは1905年に完成した日本初の石造道路トンネルで、2001年には“天城山隧道”の名前で国の重要文化財に指定されました。
トンネル北側(修善寺側)の入り口付近には公衆トイレや休憩用の東屋が整備されているため、大休止をとるのにも最適です。
旧天城トンネル北側(修善寺側)付近の公衆トイレと東屋
https://b-izu.com/spot/post-5925/ (美伊豆HP)
ジオサイト情報
https://izugeopark.org/geosites/amagi_tn/?cid=05 (伊豆半島ジオパーク公式HP)
※旧天城トンネル付近の道路は台風や大雨などの自然災害により通行が規制されることがあります。交通規制の情報は静岡県が提供する「静岡県道路通行規制情報提供システム(http://douro.pref.shizuoka.jp/kisei/program/)」等でご確認ください。
旧天城トンネルを抜けるとルートは河津桜で有名な河津町に入り、しばらく砂利道と舗装された道路が続きます。トンネルから1.2㎞の地点には展望台が設置されており、眼下に二階滝(にかいだる)の雄大な姿を望むことができます。
石川さゆり「天城越え」に登場する寒天橋(旧天城トンネルから1.2㎞)
本谷川にかかる二階滝(にかいだる)
https://b-izu.com/spot/post-5877/ (美伊豆HP)
寒天橋・二階滝から30分程でルートは再び国道414号線と交わるので、自動車に注意して道路を横断します。
国道414号を横断するとルートは再び未舗装路になります。
森の中のルートを歩くとフェンスに囲まれたわさび田付近で平滑の滝との分岐に行き当たります。踊子歩道の本線は「河津七滝・宗太郎杉」方面ですが、お急ぎでなければ平滑の滝に立ち寄ることをお勧めします。
平滑の滝への分岐点。踊子歩道本線は「河津七滝・宗太郎園地」方面。
【平滑の滝】
分岐点から5分とかからずたどり着ける平滑の滝は落差約4m、幅約20mの滝で、巨大な一枚岩から流れ落ちる様子はまさに壮観。水際まで下りることもできるので、臨場感あふれる光景を楽しめます。
https://b-izu.com/spot/post-5865/(美伊豆HP)
踊子歩道本線に戻り、河津七滝方面へ20分ほど進むと、ルートは巨大な杉並木のなかに入ります。
【宗太郎杉並木(宗太郎園地)】
成人男性でも抱えきれないほどの太さの杉が立ち並ぶ林道は、この地を開発した人物の名にちなんで宗太郎杉並木(宗太郎園地)と呼ばれています。明治初期に植えられた杉の樹齢は130年を超え、一帯は神秘的な雰囲気に包まれています。
https://b-izu.com/spot/post-5853/(美伊豆HP)
【河津七滝】
宗太郎杉並木を通り過ぎるとルートは猿田淵を経由して河津七滝に差し掛かります。
河津七滝(かわづななだる)は河津川に連なる7つの滝の総称です。川に沿って遊歩道が整備されており、個性的な滝や柱状節理など変化に富んだ景観を楽しめます。
各滝には”カニ滝”や”蛇滝”などの名前が付けられていますので、滝を眺めながら名前の由来を想像してみるのも面白いかもしれません。
七滝の最下流に位置する大滝は、高さ30m、幅7mと名前のとおり七滝のなかで最大の滝で、展望台からその雄姿を眺めることができますが、展望台に通じる大滝歩道は開放時間が季節によって変化するのでご注意ください。
https://b-izu.com/spot/post-5919/(美伊豆HP)
ジオサイト情報(伊豆半島ジオパーク公式HP)
・釜滝 https://izugeopark.org/geosites/kamadaru/?cid=C02
・エビ滝 https://izugeopark.org/geosites/ebidaru/?cid=C02
・蛇滝 https://izugeopark.org/geosites/hebidaru/?cid=C02
・初景滝 https://izugeopark.org/geosites/shokeidaru/?cid=C02
・カニ滝 https://izugeopark.org/geosites/kanidaru/?cid=C02
・出合滝 https://izugeopark.org/geosites/deaidaru/?cid=C02
・大滝 https://izugeopark.org/geosites/odaru/?cid=C02